訪問看護とは|訪問看護に携わる職種や仕事内容、提供機関など
著者: ゲートウェイ
更新日:2023/12/22
公開日:2022/07/07
高齢化社会が進む中、病気や障害があっても住みなれた地域・自宅で生活したい、最期は自宅で迎えたいなど、高齢者の療養・生活のあり方が多様化しています。しかし家族だけで医療的なケアができるか不安、何かあった時にすぐに頼れる人がいないなど悩みや不安も多いもの。そこで活躍するのが訪問看護です。今回は訪問看護とはなにかを踏まえて、訪問看護に携わる職種や仕事内容、訪問看護の実態などをご紹介します。
目次
訪問看護とは
厚生労働省資料では、訪問介護の概要について下記のように述べています。
〇疾病又は負傷により居宅において継続して療養を受ける状態にある者に対し、その者の居宅において看護師等による療養上の世話又は必要な診療の補助を行う。
〇サービス提供は、病院・診療所又は訪問看護ステーションが行うことができる。
〇利用者は年齢や疾患、状態によって医療保険又は介護保険いずれかの適用となるが、介護保険の給付は医療保険の給付に優先する。
〇要介護者については、末期の悪性腫瘍、難病患者、急性増悪等による主治医の指示があった場合などに限り、医療保険の給付による訪問看護が行われる。
つまり、訪問看護とは継続して療養が必要な方が自宅で療養上の世話や診療が受けられるサービスのことです。そして訪問看護サービスを提供できるのは病院や診療所、訪問看護ステーションのいずれか機関です。なお、訪問看護サービスは医師の指示書に基づいて提供されます。
訪問看護の利用者
訪問看護の利用者は「小児等40歳未満の者及び要介護・要支援者以外」と「要介護・要支援者」の2パターンがあります。令和元年6月時点での訪問看護利用者数は、小児等40歳未満の者及び要介護・要支援者以外で約28.9万人、要介護・要支援者で約55.4万人です。要介護・要支援者の多くは高齢者であることから、訪問看護の高齢者需要が高いことがわかります。なお、平成23年の要介護・要支援者の訪問看護利用者数は約28.7万人であり、10年未満の間で高齢者の訪問看護利用者数は2倍にも上昇しています。今後も高齢者数は増加傾向にあるため、訪問看護の需要もさらに増加することが予測されます。
そして、訪問看護は医療保険・介護保険に該当するものです。小児等40歳未満の者及び要介護・要支援者以外にかかる「訪問看護療養費」は医療保険より給付され、要介護・要支援者の「訪問看護費」は介護保険より給付されます。医療保険の対象となるのは厚生労働大臣が定める疾病・状態に該当する、退院日の訪問介護が認められた場合など。そして介護保険の対象となるのは、要介護・要支援認定を受けている65歳以上の高齢者、または介護保険上の特定疾病による要介護・要支援認定を受けている40〜64歳の方です。
訪問看護事業所数の推移
訪問看護の需要増加に伴い、訪問看護事業所の数も年々増加しています。平成23年には7,683施設だった訪問看護事業所は、平成31年で11,795施設に増加。都道府県別にみると、大阪・東京・神奈川・愛知の順に事業所数が多く、人口が多い都市部での訪問看護需要が高いことがわかります。さらに介護・医療保険制度における訪問介護の請求事業所数は1万か所以上を超えている一方、介護保険を算定する病院・診療所の数は年々減少傾向にあります。
訪問看護に携わる職種
訪問看護に携わる職種は、下記のような看護・リハビリの専門職です。
看護の専門職 | リハビリの専門職 |
---|---|
・看護師 ・准看護師 ・保健師 ・助産師 |
・理学療法士 ・作業療法士 ・言語聴覚士 |
ここでは、各職種について詳しくみていきます。
看護の専門職
看護の専門職として訪問看護に携わるのは、看護師をはじめとした看護資格を持つ看護職です。厚生労働省「令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、訪問看護ステーションで働く看護職数と総数からみた構成割合は以下の通りです。
看護師 | 准看護師 | 保健師 | 助産師 | |
---|---|---|---|---|
実人員(人) | 62,157 | 5,347 | 307 | 37 |
構成割合(%) | 4.6 | 1.9 | 0.6 | 0.1 |
助産師は一見看護とは関係のない職種に思われますが、看護師資格がないとなれない職種です。他看護職と比較すると訪問看護に携わっている人は少ないですが、助産師資格を持ちながら訪問看護の道へ進むのも1つのキャリアです。
リハビリの専門職
訪問看護に携わる主なリハビリ専門職は、国家資格を持つ理学療法士や作業療法士、言語聴覚士です。訪問看護では医療的ケアや診療の提供だけでなく、リハビリなどのケアも含まれます。療養上の世話や診療とあわせて、自宅で生活するためにリハビリが必要な場合にはリハビリ専門職が訪問看護としてサービスを提供します。
訪問看護のサービス内容から見る仕事内容
訪問看護では、ご利用者さまの心身状況や環境などを踏まえて日々の健康管理や療養上の世話、医療的ケアや看取りと幅広いサポートを提供します。ここでは、訪問看護のサービス内容から訪問看護職員の仕事内容をご紹介します。
医療的ケア
医療的ケアでは、医師の指示に基づき居宅でも医療機関と遜色ない看護を提供。具体的には、以下のような行為を行います。
・点滴
・注射
・採血
・バイタルチェック
・たん吸引
・経管栄養
・胃ろう、腸ろう、腎ろう、膀胱ろう管理
・人工呼吸器管理
・在宅酸素療法
・人工肛門、パウチ交換
・カテーテル管理
・床ずれ処理
・ガーゼ交換
・服薬管理 など
日常的な健康管理から、医療的な専門行為まで幅広く対応します。時に容態が急変することもあるため、24時間体制でオンコール対応している事業所も多くあります。
療養上のお世話
医療的ケアだけでなく、食事や入浴の手伝い、口腔ケアや体位変換など療養上の世話も行います。介護職員ではないため本格的な介護行為は行いませんが、生活する上で必要なサポートを提供します。
精神・心理的サポート
ご利用者さまの精神・心理的なサポートも訪問看護職員の重要な役割の1つ。病気を患っていると、生活する上で不安や悩みも多く抱えてしまうものです。精神・心理状態の安定化に努め、ご家族とも連携してご利用者さまの希望を尊重した生き方をサポートします。
ご家族への助言・相談対応
ご利用者さまに対してだけでなく、ご家族への助言や相談相手となるのも大切な仕事です。介護や看護に関する相談だけでなく、日常生活や健康管理に関する相談にも対応。また訪問看護時間外で必要な看護やサポートに関する助言、ご家族の精神的サポートも行います。
終末期ケア・看取り
最期を自宅で迎えることを希望する場合、終末期看護や看取りにも対応します。がんのような病気による終末期であれば痛みの緩和を実施し、ご利用者さまが少しでも快適に過ごせるようサポートします。また看取りに関する相談がアドバイス、ご本人やご家族の精神的サポートも大切な役割です。
訪問看護を提供する機関|訪問看護の就業場所
訪問看護を提供する機関としてメインとなるのは訪問看護ステーションや病院・診療所ですが、それ以外にも訪問看護に対応する機関はいくつかあります。ここでは訪問看護の就業場所として、訪問看護を提供する機関をご紹介します。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションは、看護師や保健師、理学療法士などが所属する事業所です。職員は訪問看護ステーションからご利用者さまの自宅や施設へと出向き、訪問看護を提供します。訪問看護はご利用者さまの主治医の指示に基づき提供されるものですが、訪問看護ステーションは独立した事業所です。そのためご利用者さまの主治医の所属に関係なく、独立した地域の事業所として運営しています。
病院・診療所
訪問看護に対応している、または訪問看護部が設けられている病院・診療所でも訪問看護が提供されます。病院や診療所のような保険医療機関は、介護保険法では「みなし指定訪問看護事業所」と扱われます。そのため、訪問看護ステーションと同じく介護保険・医療保険の範囲で訪問看護の提供が可能です。またこの場合、主治医のいる医療機関で訪問看護が提供されるため、訪問看護にあたり指示書は不要となります。
看護小規模多機能居宅介護
看護小規模多機能居宅介護、通称「看多機」は訪問看護に対応する介護保険サービスです。訪問看護だけでなく、訪問介護・通い・泊まりを1つの事業所が提供するため、ご利用者さまのニーズに合わせて多様なサービスが提供されます。訪問看護にあたる常勤看護師1名以上、常勤換算2.5人以上の看護職員が配置されていれば「みなし指定訪問看護事業所」として医療保険の訪問看護にも対応可能です。
定期巡回・臨時対応型訪問看護
定期巡回・臨時対応型訪問看護は、24時間体制で緊急時にも対応可能な介護保険サービスです。要介護1〜5認定を受けた方を対象としたサービスであり、住民票と同じ地域にある事業所が利用できます。定期巡回・臨時対応型訪問看護に対応している事業所には、訪問看護・訪問介護を一体的に提供する「一体型」と、訪問看護は別事業者が対応する「連携型」の2種類があります。なお、看護小規模多機能居宅介護と同様に、訪問看護にあたる常勤看護師1名以上、常勤換算2.5人以上の看護職員が配置されていれば「みなし指定訪問看護事業所」として医療保険の訪問看護にも対応可能です。
民間訪問看護サービス
民間の訪問看護サービスは、医療保険・介護保険適用外で訪問看護が実施されます。民間企業が運営する事業所であるため、サービス内容や料金が事業所によって多様である点が特徴です。保険適用外であるため料金相場は高めですが、保険適用内の訪問看護にはできない多様なニーズに応えられるオリジナルメニューを用意している事業所も多くあります。
求人からみる訪問看護
職種 | 看護師 |
---|---|
仕事内容 | 葛飾区の介護福祉施設「新小岩訪問看護ステーションほほえみ」に所属する訪問看護師スタッフ。 看護師資格を活かして、土日休み、日勤の正社員として安定してお仕事できます。 具体例 事業所は中川を渡る平和橋のそば、平和橋児童遊園向かいにあります。 |
給与 | 月給320,000円~ ※理論年収450万~550万(経験による) 夜勤発生時手当あり(オンコール手当3000円、別途5000円/件) |
雇用形態 | 正社員 |
勤務時間 | 09:00~18:00 [月~金] ※祝休 |
応募資格 | 学歴不問、PCスキル不要 必須資格:看護師資格 |
社会保険 | 各種社会保険制度あり(法令通り) |
福利厚生 | 健康診断、育児・介護休暇、育児・介護短時間勤務制度、制服貸与、財形貯蓄制度、資格取得支援制度、ウェルカムバック制度 |
訪問看護ステーションにおける、看護師の求人例です。1回のケアは30〜60分程度となり、1日に数件を回って訪問看護を提供します。また訪問看護職員は不定期出勤のイメージが大きいですが、こちらの求人例では土日休み・平日日勤のみの勤務です。夜勤はオンコール体制となるため状況によっては稼働しますが、しっかりと手当がつきます。看護師資格が必要であることからも、給与水準が高い点が訪問看護の特徴です。
訪問看護とは介護保険・医療保険で在宅診療が受けられるサービス!
訪問看護は、訪問看護ステーションや医療機関、介護保険サービスが提供するサービスです。在宅生活を送るにあたり、医療依存度が高い方は訪問看護を利用することで住みなれた自宅・地域での生活が継続できます。在宅看護・介護や自宅での看取りを希望する高齢者も増えており、今後訪問看護の需要はますます増加することが見込まれます。今記事を参考に、訪問看護とは何かを押さえてみてください。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。