地域包括支援センターの仕事内容|仕事は大変?職種別の仕事などを解説
著者: ゲートウェイ
更新日:2024/08/27
公開日:2022/08/11
ケアマネージャーや保健師、社会福祉士や看護師の就職・転職先の1つに地域包括支援センターがあります。地域包括支援センターは、地域に住む高齢者の生活を総合的に支える施設です。今回は地域包括支援センターの仕事について、施設全体の仕事内容や職種別の仕事内容を詳しくご紹介します。
地域包括支援センターとは
介護保険法第115条の46第1項では、地域包括支援センターを以下のように定義しています。
地域包括支援センターは、市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員を配置して、住民の健康の保持及び安定のために必要な援助を行うことにより、地域の住民を包括的に支援することを目的とする施設。
まずは、地域包括支援センターとは何かについてご紹介します。
地域包括支援センターの役割
地域包括支援センターは、健康保持と安定のために必要な援助を行い、地域の住民を包括的に支援する役割を持ちます。住民といっても、主な対象者は地域に暮らす高齢者やそのご家族、介護支援に関わる方です。
高齢化社会にある日本では、団塊世代が75歳以上となる2025年を目処に、高齢者が要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい生活を送れるよう地域包括ケアシステムの構築を目指しています。地域包括ケアシステムとは、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される仕組みのことです。地域包括支援センターは地域包括ケアシステムを実現するために設置され、その中心を担う役割があります。介護・福祉の専門職が常駐し、地域の高齢者の生活を総合的・包括的に支援します。
地域包括支援センターの利用対象者
地域包括支援センターの利用対象者は、65歳以上の高齢者やそのご家族、介護支援に関わる方です。要支援・要介護の認定を受けていなくても利用でき、介護予防の意思があれば利用できるサービスの紹介も受けられます。「1人暮らしに不安がある」「初めての介護でなんの介護保険サービスが利用できるかわからない」「離れて暮らしている高齢の両親が心配」など、高齢者の生活に関する相談や支援に総合的に対応している点が特徴です。
地域包括支援センターの設置状況
地域包括支援センターは市区町村に1か所以上設置されており、令和3年4月末時点では全国に5,351施設あります。ブランチやサブセンターを含めると、総数は7,386施設です。地域包括支援センターの約8割が委託型であり、社会福祉法人や社会福祉協議会、医療法人などが運営しています。近年の傾向を見ても委託型の地域包括支援センターが増加しており、今後も社会福祉法人を中心に地域包括支援センターも拡大すると考えられます。
地域包括支援センターの仕事内容
地域にお住まいの高齢者やご家族、介護関係者を支援する地域包括支援センターですが、具体的にどのような仕事をするのでしょうか。ここでは、代表的な4つの仕事内容をご紹介します。
地域包括支援センターの仕事①総合相談支援
高齢者やご家族など、生活における医療・介護・福祉などの総合的な相談を受け付けています。相談内容に応じて必要なサービスを紹介したり、支援を考えたりと横断的にサポートする点が特徴です。適切な介護サービスや制度を紹介するだけでなく、関係機関との連絡・調整にも対応します。そのため、特に初めて介護に関わることとなる高齢者家族にとって、地域包括支援センターは心強い存在です。
地域包括支援センターの仕事②権利擁護
権利擁護とは、高齢者の権利を守ることです。仕事としての権利擁護は、具体的に以下のようなことに対応します。
・高齢者に対する詐欺や悪徳商法、消費者被害などの防止
・高齢者虐待の早期発見、防止
・成年後見制度の活用支援 など
世の中には、高齢者をターゲットにした犯罪も多く存在します。代表的な被害がオレオレ詐欺や振り込め詐欺であり、こうした被害から高齢者を守ることも地域包括支援センターの役割です。そして、認知症や重度の要介護状態により、自分で金銭管理や法的手続きなどができない高齢者が不当な立場にならないよう、後見人を立てる支援も行っています。
地域包括支援センターの仕事③包括的・継続的ケアマネジメント支援
地域包括支援センターでは高齢者の生活を支えるために多職種の職員がいますが、中でも高齢者の生活に密着してサポートするのがケアマネージャーです。ケアマネージャーを中心として地域包括ケアシステムを実行するためには、ケアマネージャーの質が問われます。そこで、地域包括支援センターではケアマネージャーの支援も実施。具体的には、研修会の実施やケアマネージャー同士のネットワークの確立支援、個人で解決・対応することが困難な事例に対するアドバイス・支援、個別指導・相談などを提供します。高齢者の生活を守るため、包括的・継続的なケアマネジメントができるよう、基盤や体制を整えるのも地域包括支援センターの役割です。
地域包括支援センターの仕事④介護予防ケアマネジメント
地域包括支援センターでは、将来的に要介護になる恐れのある全ての高齢者に対して介護予防ケアマネジメントを実施します。介護予防ケアマネジメントでは、高齢者と話し合いながら身状況や環境、課題などをアセスメントし、介護予防のためのケアプランを作成します。要支援認定を受けていない方や非認定の方でも、介護予防の意思があれば高齢者の悩みや課題に応じて包括的に支援する点が特徴です。
職種別にみる地域包括支援センターの仕事内容
地域包括支援センターでは、包括的支援事業と介護予防支援事業の2つにおいて以下人員基準が設けられています。
包括的支援事業 | 介護予防事業 |
---|---|
▼下記職種を最低各1名以上 ・保健師 ・社会福祉士 ・主任介護支援専門員 (準ずる者を含む) |
▼下記職種を必要数 ・保健師 ・介護支援専門員 ・社会福祉士 ・経験のある看護師 ・3年以上経験のある社会福祉主事 |
ここでは、職種別に地域包括支援センターでの仕事を詳しくみていきます。
ケアマネージャーの仕事内容
介護支援専門員、通称「ケアマネージャー」は主任介護支援専門員と通常の介護支援専門員の2職種が配置されます。下記で、それぞれの仕事内容をご紹介します。
主任介護支援専門員の仕事内容
主任介護支援専門員は、介護支援専門員の上位資格です。2006年に誕生した比較的新しい資格であり、「主任介護支援専門員研修」を受講することで資格が得られます。主任介護支援専門員はケアプランの作成や支援提供にも関わりますが、主な仕事は地域のケアマネージャーの統括やサポート、地域ケア会議の開催などです。地域のケアマネージャーを支えながら、地域の抱える高齢者の課題や問題解決に取り組みます。
介護支援専門員の仕事内容
介護支援専門員は、高齢者やご家族などの相談を受けたり、ケアプランを作成したりすることが主な仕事内容です。主任介護支援専門員のように管理側ではないため、高齢者やご家族などと直接関わることの多いポジションです。
保健師の仕事内容
保健師は医療的な観点から、相談や支援を提供することが主な仕事です。地域包括支援センターの仕事の中でも、介護予防マネジメントが業務の中心です。高齢者の状況に応じて、医療機関やサービスの紹介、病院や保健所など必要機関と連絡・調整を図ります。そのほか介護予防のケアプラン作成や介護予防教室の開催、独居高齢者の家庭訪問なども仕事に含まれます。
社会福祉士の仕事内容
社会福祉士は地域包括支援センターの業務のうち、主に総合相談と権利擁護をメインで担います。介護・福祉の観点から高齢者やご家族などの相談に対応し、必要に応じて各機関と調整を図ります。高齢者が心身共に健やかに、そして安全に暮らせるようサポートするのが社会福祉士の仕事です。
看護師の仕事内容
看護師は保健師と同じく、医療的観点から高齢者の生活を支援することが主な仕事です。具体的には、認知の重症化防止や介護予防のケアプラン作成、医療的判断が必要な相談などに対応します。医療機関で働く看護師のように、医療行為を行うことはほとんどありません。
地域包括支援センターの仕事は大変?働くやりがいとは
地域包括支援センターは、介護が必要な際の相談窓口として、地域包括ケアシステムの中心を担っています。需要が高く、無料で利用できる機関であるといった理由から、地域包括支援センターの業務量は増加傾向にあります。特に高齢者人口の多い地域では業務過多となっているケースもあり、地域包括支援センターでの仕事は大変といえるでしょう。 しかし、地域包括支援センターに限らず、介護業界は慢性的な人手不足が課題です。その点で、大変なのは地域包括支援センターに限った話ではありません。そして大変ではありますが、それ以上にやりがいが大きい仕事です。介護・福祉分野の専門職としてのスキル・経験が存分に発揮でき、地域という大きなフィールドで多くの高齢者やご家族のサポートができます。
大きい規模で自分の専門性を発揮できる現場はなかなかないため、地域包括支援センターならではのやりがいと使命感を持って働けるでしょう。
地域包括支援センターの仕事は多職種が連携して地域の高齢者の生活をサポートすること!
地域包括支援センターは高齢者が住み慣れた地域で自分らしく生活できるよう、多職種が連携して包括的にサポートすることが役割であり、仕事です。介護・福祉の専門職が常駐する施設であるため、地域にお住まいの高齢者やご家族などにとって心強い存在です。仕事は大変ですが、専門性が発揮できるやりがいの大きい職場といえます。本記事を参考に、地域包括支援センターの仕事への理解を深めてみてください。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。