保健師と看護師の違い|資格や役割、給料の違いなどをチェック
著者: ゲートウェイ
更新日:2024/08/27
公開日:2022/08/21
保健師と看護師は、保健師助産師看護師法という同じ法律で定められている職種です。どちらも看護師資格を必要とすることからも、保健師として働くか、看護師として働くかを迷っている方もいるでしょう。そこで今回は、保健師と看護師の違いをさまざまな観点からご紹介します。違いを押さえて、どちらが自分に向いているかをチェックしてみてください。
目次
保健師・看護師とは
まずは、保健師とは・看護師とは何かについてみていきます。
保健師とは
保健師助産師看護師法第2条では、保健師を以下のように定義しています。
「保健師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者をいう。
保健師が担う保健指導とは、健康診断後の健康相談やアドバイス、健康に生活するための生活指導などのこと。保健師は個人の保健指導だけでなく、地域やコミュニティ単位での健康推進を図る役割も担います。また、保健師助産師看護師法には「保健師の名称を用いて」との記述があります。これは保健師が名称独占資格であるからです。名称独占資格とは、有資格者以外がその名称を名乗ることができない資格区分のことです。そのため、保健師と名乗って保健指導ができるのは保健師資格を持っている人のみとなります。
看護師とは
保健師助産師看護師法第5条では、看護師を以下のように定義しています。
「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。
」
看護師は、一般的にも広く知られている職業の1つです。病気や怪我を患っている人がスムーズに治療・療養ができるよう、心身や環境のケアに徹する役割を担います。
保健師と看護師の違い
同じ法律で定められている保健師と看護師ですが、以下のようにさまざまな点で違いがあります。
①資格の違い
保健師も看護師も国家資格である看護師資格が必要です。そこからさらに、保健師は国家資格である保健師資格も取得しなければなりません。つまり、保健師は看護師資格と保健師資格の2つの国家資格を持つ職種です。保健師資格を取得するには、まずは看護師資格の取得を目指し、取得後に1〜2年の保健師養成課程を経て保健師国家試験に合格するルートが一般的です。なかには看護師・保健師統合のカリキュラムが設けられた大学もあり、その場合は看護師国家試験と保健師国家試験の同時受験が可能です。ただし、保健師国家試験に合格しても、看護師国家試験に不合格ですと保健師資格は取得できません。
②役割の違い
最もわかりやすい違いが役割です。看護師は病気や怪我を患った人の治療・療養にあたりますが、保健師は病気や怪我の予防を図ります。わかりやすくいえば、看護師にお世話になることがないよう、未然に病気を防ぐ役割を持つのが保健師です。そのほか、健康維持・増進のために指導を含むさまざまな保険活動を行います。
③職場の違い
下記は、日本看護協会の統計資料による保健師と看護師の主な就業先と構成割合です。
保健師 | |
---|---|
市区町村 | 46.7% |
診療所 | 15.6% |
保健所 | 12.9% |
」
看護師 | |
---|---|
病院 | 68.9% |
診療所 | 15.0% |
訪問看護ステーション | 4.3% |
」
看護師の職場は医療機関がほとんどを占めますが、保健師は市区町村や保健所といった行政機関が中心です。もちろん同じ看護職に分類されることから、診療所や病院、福祉施設などで働く保健師もいます。また、保健師は職場によって下記のように分類されます。
行政保健師 | ・市区町村の役所 ・保健所、保険センター |
---|---|
産業保健師 | ・一般企業:医務室、健康保険組合など |
学校保健師 | ・大学、専門学校 ・私立中学、高校 |
病院保健師 | ・医療機関 |
なお、行政保健師は公務員も兼ねるため、国家公務員試験や地方公務員試験にも合格する必要があります。
④給料の違い
下記は、厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」による保健師と看護師の給料です。
※年収=月給×12+賞与
保健師 | 看護師 | |
---|---|---|
平均年齢(歳) | 41.8 | 41.2 |
勤続年数(年) | 8.0 | 9.2 |
月給 | 32.3万円 | 34.4万円 |
賞与 | 92.0万円 | 85.4万円 |
年収※ | 479.6万円 | 498.2万円 |
看護師は夜勤手当などがつく関係で、保健師よりも給与が高い傾向にあります。しかし、一般的には保健師の給料の方が高いと言われることもあり、職場によっては看護師よりも保健師の方が高い給料になることもあります。また行政保健師は日勤、かつ福利厚生や待遇も充実している点がメリットです。さらに公務員という安定感、そして年数に応じて確実に給料アップする点も特徴です。
保健師と看護師の資格難易度の違い
2022年に実施された第108回保健師国家試験、第111回看護師国家試験の合格率は以下の通りです。
受験者数(人) | 合格率(%) | |
---|---|---|
保健師国家試験 | 7,948 | 89.3 |
看護師国家試験 | 65,025 | 91.3 |
保健師国家試験も看護師国家試験も、合格率は例年80%後半〜90%前半で推移しています。詳細な合格率を見るとやや保健師の方が難易度が高いですが、大きな差はありません。また保健師は看護師資格を取得していることが前提であるため、取得にかかる時間や勉強量を考えると、保健師の方が難易度が高いといえるでしょう。
保健師・看護師として働くメリット
同じ看護師資格、法律に基づく保健師と看護師ですが、役割や資格、給料などさまざまな面で違いがあります。ここでは、保健師・看護師として働くメリットについてみていきます。
保健師として働くメリット
・公務員として安定的に働ける
・夜勤がない
・活躍の幅が広い
保健師の約7割は、公務員である行政保健師として働いています。医療職でありながらも公務員として働くことができ、安定した給料と充実した待遇に期待できます。また保健師は基本的に夜勤がなく、病院以外の職場であれば残業も少ないでしょう。プライベートを充実させたり、家庭と両立して働きやすい点は保健師の魅力です。そして行政から産業、学校から病院と活躍の幅も広いため、ライフステージや目的に合わせてキャリアアップの選択肢が広い点も保健師として働くメリットです。
看護師として働くメリット
・給料水準が高い
・転職しやすい
・やりがいが大きい
看護師は夜勤などが多いため、給料水準が高い点がメリットです。また医療需要が増加する中、看護師は慢性的な人手不足に悩まされています。そのため看護師は売り手市場であり、転職しやすい点もメリットの1つです。医療業界だけでなく、介護・福祉業界でも活躍できるため、キャリアの幅も広がります。そして何より、患者さんの治療・療養にあたる仕事であることからもやりがいが大きい点が看護師の魅力です。直接感謝される機会も多く、やりがいや高いモチベーションを持って働くことができるでしょう。
そして看護師資格があれば最短1年で保健師国家試験が受けられるため、まずは看護師として経験を積んでから保健師を目指すことも可能です。
保健師と看護師は資格や役割、給料などに違いがある!
保健師と看護師は同じ看護職であり、助産師保健師看護師法で定められている職種です。保健師になるには看護師資格が必須であるため、看護師資格を取得していればいつでも保健師を目指せます。保健師と看護師の役割など違いを押さえた上で、どちら自分にあっているかを見極めてみましょう。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。