保健師と看護師の違い|資格や役割・給料の違いなどをチェック
著者: ゲートウェイ
更新日:2025/06/25
公開日:2022/08/21
保健師と看護師は、保健師助産師看護師法という同じ法律で定められている職種です。どちらも看護師資格を必要とすることからも、保健師として働くか、看護師として働くかを迷っている方もいるでしょう。本記事では、保健師と看護師の違いをさまざまな観点からご紹介します。違いを押さえて、どちらが自分に向いているかをチェックしてみてください。
保健師・看護師とは
まずは、保健師とは・看護師とは何かについてみていきます。
保健師とは
保健師助産師看護師法第2条では、保健師を以下のように定義しています。
「保健師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者をいう。
保健師が担う保健指導とは、健康診断後の健康相談やアドバイス、健康に生活するための生活指導などのこと。保健師は個人の保健指導だけでなく、地域やコミュニティ単位での健康推進を図る役割も担います。また、保健師助産師看護師法には「保健師の名称を用いて」との記述があります。これは保健師が名称独占資格であるからです。名称独占資格とは、有資格者以外がその名称を名乗ることができない資格区分のことです。そのため、保健師と名乗って保健指導ができるのは保健師資格を持っている人のみとなります。
看護師とは
保健師助産師看護師法第5条では、看護師を以下のように定義しています。
「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。
看護師は、一般的にも広く知られている職業の1つです。病気や怪我を患っている人がスムーズに治療・療養ができるよう、心身や環境のケアに徹する役割を担います。
保健師と看護師の違い
同じ法律で定められている保健師と看護師ですが、以下のようにさまざまな点で違いがあります。
1.資格の違い
保健師 | 看護師 |
---|---|
看護師資格に加え、保健師国家試験にも合格して取得する二重の国家資格 | 看護師国家試験に合格して取得する国家資格 |
保健師も看護師も国家資格である看護師資格が必要です。そこからさらに、保健師は国家資格である保健師資格も取得しなければなりません。つまり、保健師は看護師資格と保健師資格の2つの国家資格を持つ職種です。
保健師資格を取得するには、まずは看護師資格の取得を目指し、取得後に1〜2年の保健師養成課程を経て保健師国家試験に合格するルートが一般的です。なかには看護師・保健師統合のカリキュラムが設けられた大学もあり、その場合は看護師国家試験と保健師国家試験の同時受験が可能です。
ただし、保健師国家試験に合格しても、看護師国家試験に不合格ですと保健師資格は取得できません。
2.役割の違い
保健師 | 看護師 |
---|---|
病気の予防や健康づくりを支援する | 病気やけがの治療・療養を支える役割 |
最もわかりやすい違いが役割です。看護師は病気や怪我を患った人の治療・療養にあたりますが、保健師は病気や怪我の予防を図ります。わかりやすくいえば、看護師にお世話になることがないよう、未然に病気を防ぐ役割を持つのが保健師です。そのほか、健康維持・増進のために指導を含むさまざまな保険活動を行います。
3.職場の違い
保健師 | |
---|---|
市区町村 | 46.7% |
診療所 | 15.6% |
保健所 | 12.9% |
看護師 | |
---|---|
病院 | 68.9% |
診療所 | 15.0% |
訪問看護ステーション | 4.3% |
看護師の職場は医療機関がほとんどを占めますが、保健師は市区町村や保健所といった行政機関が中心です。もちろん同じ看護職に分類されることから、診療所や病院、福祉施設などで働く保健師もいます。また、保健師は職場によって下記のように分類されます。
行政保健師 | ・市区町村の役所 ・保健所、保険センター |
---|---|
産業保健師 | ・一般企業:医務室、健康保険組合など |
学校保健師 | ・大学、専門学校 ・私立中学、高校 |
病院保健師 | ・医療機関 |
なお、行政保健師は公務員も兼ねるため、国家公務員試験や地方公務員試験にも合格する必要があります。
4.給料の違い
下記は、厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」による保健師と看護師の給料です。
保健師 | 看護師 | |
---|---|---|
平均年齢(歳) | 38.7 | 41.2 |
勤続年数(年) | 6.9 | 9.4 |
月給 | 35.1万円 | 36.3万円 |
賞与 | 99.9万円 | 83.5万円 |
年収※ | 521.1万円 | 519.1万円 |
※年収=月給×12+賞与
看護師は夜勤手当などがつく関係で、保健師よりも給与が高い傾向にあります。しかし、一般的には保健師の給料の方が高いと言われることもあり、職場によっては看護師よりも保健師の方が高い給料になることもあります。
また、行政保健師は日勤、かつ福利厚生や待遇も充実している点がメリットです。さらに公務員という安定感、そして年数に応じて確実に給料アップする点も特徴です。
保健師と看護師の資格難易度の違い
第111回保健師国家試験、第114回看護師国家試験の合格率は以下の通りです。
試験名 | 受験者数(人) | 合格率(%) |
---|---|---|
保健師国家試験 | 7,716 | 94.0 |
看護師国家試験 | 63,819 | 90.1 |
保健師国家試験も看護師国家試験も、合格率は例年80%後半〜90%前半で推移しています。詳細な合格率を見るとやや保健師の方が難易度が高いですが、大きな差はありません。
また、保健師は看護師資格を取得していることが前提であるため、取得にかかる時間や勉強量を考えると、保健師の方が難易度が高いといえるでしょう。
保健師として働くメリット3つ
保健師の仕事は地域社会に貢献できるやりがいのある職業です。ここでは、保健師として働くことの魅力や、安定した働き方を実現できるメリットを3つの視点からご紹介します。
公務員として安定的に働ける
保健師の多くは地方自治体に所属し、正規の公務員として雇用されます。民間企業に比べてリストラや経営破綻のリスクが低いため、長期的に安定した雇用が期待できます。また、年功序列の昇給制度や退職金制度、育児休暇・産前産後休暇など福利厚生も整っており、将来設計を描きやすい点が大きな魅力です。
夜勤がない
保健師の主な業務は日中に行われる健康相談や保健指導のため、基本的に夜勤は発生しません。生活リズムが一定に保たれることで、体力的・精神的な負担を抑えながら働くことができます。また、家庭や育児との両立がしやすく、特に子育て中の世代にとって働きやすい環境が整っている点も評価されています。
活躍の幅が広い
保健師は地域保健にとどまらず、学校、企業、福祉施設などさまざまな場で求められています。高齢化社会の進行や健康志向の高まりにより、保健師の専門性が活かせる場面は年々増加しています。医療・教育・行政など複数の業界で通用するスキルを身につけられるため、転職やキャリアの選択肢が広がる点も大きなメリットです。
看護師として働くメリット3つ
看護師の仕事は大変な面もありますが、その分多くの魅力もあります。ここでは、看護師として働く上での代表的なメリットを3つの視点からご紹介します。
給料水準が高い
看護師は医療の専門職としての責任が重く、それに見合った報酬が支払われる職種です。基本給に加え、夜勤手当や資格手当、時間外手当など各種手当が支給されるため、収入が安定しやすい傾向にあります。さらに、経験年数や習得したスキルによって昇給する機会も多く、長く勤めるほど収入面でのメリットが得られやすい職業です。
転職しやすい
看護師は全国どこでも需要が高く、病院をはじめクリニック、訪問看護、介護施設など、幅広い職場からの求人があります。国家資格であるため、ブランクがある場合でも比較的再就職しやすい点も特長です。専門性が高く即戦力として期待されるため、好条件の転職先を見つけやすく、ライフスタイルに合わせた働き方を実現しやすい職種です。
やりがいが大きい
看護師の仕事は、患者の命や生活に深く関わる責任ある職業です。病気の回復やリハビリの成果を直接見守ることで、人の役に立っている実感を得られやすい点が魅力といえます。また、医療現場で日々必要とされる知識や技術を高めていく中で、自身の成長を実感できることがモチベーションにもつながります。精神的な充実感も大きい仕事です。
保健師に向いている人の特徴3つ
保健師は人々の健康を支える専門職であり、その役割には多くの対人スキルや価値観が求められます。ここでは保健師に向いているとされる主な特徴を3つご紹介します。
人と接するのが好きである
保健師は幅広い世代の住民と日常的に関わるため、人と接することが好きな方に向いています。相談者の悩みに共感し、信頼関係を築く姿勢が求められます。特に高齢者や子育て中の方など、多様な背景を持つ人々と関わる場面が多く、単なる健康支援にとどまらず、生活全体をサポートする意識が大切になります。
予防や健康管理に関心がある
病気の予防や健康の維持に関心を持ち、自身でも規則正しい生活を実践している人は、保健師の業務に適しています。地域住民への保健指導を行う上では、説得力のある生活習慣や健康知識が求められます。さらに、継続的な支援を行うためには、自己管理能力や計画的な行動ができる力も必要とされます。
人と接するのが好きである
保健師の仕事は、医師や看護師、行政職員など多職種と連携しながら進めるため、協調性が重要です。地域包括ケアなどの現場では、保健師がチームの調整役となる場面も多く、相手の立場を理解したうえで柔軟に対応する力が求められます。役割の違いを尊重しながら関係を築ける人に向いています。
看護師に向いている人の特徴3つ
看護師として長く活躍するためには、知識や技術だけでなく、適性も重要です。ここでは、看護師に求められる代表的な資質を3つの観点からご紹介します。
相手の立場に立って行動できる
患者一人ひとりの不安や苦痛に寄り添い、思いやりを持って接する姿勢は看護師に不可欠です。「自分が患者だったらどうされたいか」を考え、丁寧な言動ができる人は信頼を得やすい傾向にあります。高齢者や子ども、障がいのある方などへ自然と優しく接することができる人に向いています。
責任感を持って仕事に取り組める
看護師の仕事は体力的にも精神的にも負担が大きく、夜勤や不規則な勤務にも対応が求められます。そのような中でも、安定したパフォーマンスを維持し、緊急時に冷静な判断ができる人は高く評価されます。また、命を預かる職業としての責任感を持ち、誠実に行動できることが看護師としての信頼につながります。
的確な報連相ができる
医療現場では、報告・連絡・相談を怠らず、正確に情報を共有する力が求められます。医師や他の看護師、多職種との連携をスムーズに行える人は、チーム医療において重要な存在です。また、全体の流れを把握し、必要に応じて臨機応変にサポートできる柔軟性も強みとなります。協調性と責任感のある対応が求められます。
保健師・看護師に関するよくある質問
ここでは、保健師と看護師のどちらになるか悩んでいる人向けに、よくある質問をまとめました。
Q. 看護師は病院以外でも働けますか?
A 介護施設や企業、訪問看護など病院以外でも幅広く活躍できます。
看護師は病院以外のさまざまな場所でも活躍できます。たとえば介護施設、保育園、企業の健康管理室、訪問看護ステーションなどが挙げられます。また、行政機関や学校での保健指導業務に従事する場合もあります。医療機関に限らず、看護の知識と技術を活かせる職場は多岐にわたります。自分の適性やライフスタイルに合った職場選びが可能です。
Q. 保健師はどのような職場で働けますか?
A 自治体や企業、学校、保健所などで予防活動や健康支援を行います。
保健師は主に自治体や企業、教育機関、保健所などで勤務しています。地域住民の健康支援や、職場の従業員への健康教育など、集団に対する予防的な活動が中心です。病気を未然に防ぐための知識や対応力が求められます。臨床現場とは異なり、生活習慣の改善支援やメンタルヘルス対策にも関与することが多いのが特徴です。
Q. 保健師・看護師の転職に有利な資格はありますか?
A 認定看護師や専門看護師などの専門資格が転職時に強みとなります。
転職を有利に進めるためには、専門性を証明できる資格の取得が効果的です。たとえば「認定看護師」や「専門看護師」などは、特定分野に強みがあることを示せます。また、訪問看護を志望する場合は「普通自動車運転免許」も評価される要素になります。志望先の業務内容に関連した資格があると、即戦力としての印象が高まります。
Q. 保健師・看護師のキャリアアップにはどんな資格がありますか?
A看護管理者や専門職向けの資格取得がキャリアアップに役立ちます。
キャリアアップを目指すなら、看護師では「認定看護管理者」や「専門看護師」、保健師では「公衆衛生看護管理者」などの資格取得が一つの道となります。さらに、大学院で公衆衛生学を学び、より高度な地域保健活動に携わる人もいます。経験だけでなく理論的知識も深めることで、将来的に管理職や教育職への道も広がります。
保健師と看護師は資格や役割・給料などに違いがある!
保健師と看護師は共通の基盤を持ちながらも、資格の取得過程や果たす役割に明確な違いがあります。どちらも人々の健康を支える尊い職業であり、自分の適性や志向に応じた選択が大切です。給与や働き方の違いも踏まえて、自身に合った進路を考えることがキャリア形成の第一歩です。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。