認知症介護指導者とは?主な役割や活動内容、研修の概要についてご紹介
著者: ゲートウェイ
更新日:2023/12/22
公開日:2023/01/20
高齢化が進み認知症患者数が増えつつある今、認知症への理解や良質なケアの提供が求められます。「認知症介護指導者」は、介護スタッフへの指導や当事者への相談活動などを行う、認知症介護の第一線で活躍する存在です。今回は、認知症介護指導者について主な役割や活動、認知症介護指導者になるための研修などについて解説します。
目次
認知症介護指導者とは?
認知症介護指導者は、認知症介護に関する知識や技術の指導を行う人のことを指します。認知症ケアについて学ぶ研修は、基礎から実践へとステップアップ式で構成されており、認知症介護指導者はこの研修体系の最上位に位置する研修に合格した人を指します。主な役割は、認知症介護実践研修の企画・立案や、講義・実習などです。良質な認知症ケアを提供できる人材の育成を目指して、介護施設や事業所などで指導を行っています。
認知症介護指導者の主な活動内容
・各種研修の講師
・国や各都道府県の委員会への参加
・認知症患者や地域住民に対する相談・啓発活動
認知症介護指導者が行う主な活動は、認知症介護実践者研修など各種研修の講師や当事者への相談活動など多岐に渡り、各地域の行政や事業所と連携しながら活動しています。認知症の人だけでなく、その家族や地域住民など自治体レベルで幅広く活動していることが特徴です。
どの活動も、認知症介護についての理解や対応力を上げ、認知症の人が快適に生活できる地域社会に整えることを目指しています。
認知症介護指導者になるための研修を受けるメリット
認知症介護指導者研修では、その前の段階である基礎・実践研修とは異なり、認知症ケアについて人に教える技法を身につけられます。
認知症介護に関する専門知識や技術を一層深めながら、指導者としてステップアップを目指せることがメリットです。
また、認知症介護指導者研修を受けることで、活動の幅も広がります。介護スタッフへの指導や認知症の当事者や家族への相談業務などを通して、さまざまな視点から認知症の人をサポートする活動に携われるでしょう。
認知症介護指導者の研修|受講資格
認知症介護指導者研修を受けるには、いくつかクリアするべき要件があります。
まず、必要とされる条件は次の5つです。
1. | 右記いずれかの資格を持つ者、またはこれに準ずる者 | 医師・保健師・助産師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士 |
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2. | 右記いずれかに該当する者であり、相当の介護実務経験がある者 | ア:介護保険施設・事業所等に従事している者(過去に介護保険施設・事業所等に従事していた者も含む) イ:福祉系大学や養成学校等で指導的立場にある者 ウ:民間企業で認知症介護の教育に携わる者 |
3. | 認知症介護実践者研修・認知症介護実践リーダー研修を修了した者 | |
4. | 認知症介護基礎研修または認知症介護実践研修の企画・立案に参画し、または講師として従事することが予定されている者 | |
5. | 地域ケアを推進する役割を担うことが見込まれている者 |
条件(2)については、おおむね5年以上の介護実務経験があることが求められます。
さらに、5つの条件を満たした人は、研修を受ける者として適しているかどうか、都道府県の指定都市や勤務先の介護保険施設・事業者などの長からの容認と推薦が必要です。
その後、センターが実施する受講者選抜考査を受けて、センター長から研修対象者として認められた場合、認知症介護指導者研修の受講資格を獲得できます。
認知症介護指導者の研修|その他の概要
・研修カリキュラム
・研修場所
・受講手続き
・受講費用
認知症介護指導者研修には、受講資格以外にもさまざまな決まりがあります。
ここでは、認知症介護指導者研修を受けるうえで知っておきたい、研修カリキュラムや受講費用などを解説します。
研修カリキュラム
認知症介護指導者研修では、4つのカリキュラムを順番に受講します。講義と演習に112時間、職場実習に5週間(25日間)、他施設や事業所での実習に21時間、合計308時間の研修です。
令和4年現在、講義と演習の一部(30時間)はオンラインでの受講ができます。
各カリキュラムで学ぶ科目と研修時間は次の通りです。
認知症介護研修総論 (合計11時間) |
・認知症介護実践者等養成事業の実施(1時間) ・認知症ケアに関する施策と行政との連携(1時間) ・研修の目標設定と研修総括(9時間) |
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認知症ケアにおける教育の理論と実践 (合計61時間) |
・教育方法論(14時間) ・授業設計法(28時間) ・模擬授業(14時間) ・研修企画と評価(5時間) |
認知症ケア対応力向上のための人材育成 (合計214時間/職場実習5週間を含む) |
・人材育成論(3時間) ・成人教育論(3時間) ・認知症ケアに関する研究法の概論(2時間) ・職場研修企画(14時間) ・職場実習(5週間/25日) ・職場実習の振り返り(3時間) ・職場実習報告(14時間) |
地域における認知症対応力向上の推進 (合計22時間) |
・共生のために地域で支え合う体制づくり(1時間) ・他施設・事業所実習(21時間) |
上記すべてのカリキュラムを終えた後、修了考査を受けて合格した者に認知症介護指導者の修了証書が与えられます。
研修場所
認知症介護指導者研修が行われる場所は、東京・仙台・大府にある3つのセンターです。
3拠点にはそれぞれ対象地域が割り当てられています。
センター名 | 対象地域 |
---|---|
東京センター | 【関東・新潟地区】 茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、千葉市、横浜市、川崎市、さいたま市、相模原市、新潟市 【九州・沖縄地区】 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県、北九州市、福岡市、熊本市 |
仙台センター | 【北海道地域】 北海道、札幌市 【東北地域】 青森県、岩手県、宮城県、仙台市、秋田県、山形県、福島県 【中国地域】 鳥取県、島根県、岡山県、岡山市、広島県、広島市、山口県 【四国地域】 徳島県、香川県、愛媛県、高知県 |
大府センター | 【中部地域】 富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、静岡市、浜松市、名古屋市 【近畿地域】 三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、京都市、大阪市、堺市、神戸市 |
研修は基本的に年2~3回実施されますが、センターごとに開催する回数や日程が異なります。
認知症介護指導者研修の受講を希望する方は、自分が住んでいる地域の研修日程を確認した上で、手続きを進めましょう。
受講手続き
認知症介護指導者研修の申し込みには、下記の書類が必要です。
1.受講申込書
2.認知症介護指導者養成研修に係る推薦書
3.認知症介護実践リーダー研修修了書の写し1部
4.受講者選抜考査のための実践事例報告に関する提出書類
(受講者が介護現場で関わった認知症の人1事例について、実践事例報告を3000字程度でまとめる)
上記4つの書類を、自分が住んでいる都道府県または指定都市の担当部署宛に送付します。
受講費用
認知症介護指導者研修にかかる費用は次の通りです。
受講料 | 230,000円 |
その他(教材費や災害傷害保険など) | センターごとに異なる |
受講料は、3つのセンターすべてに共通する金額です。
その他の費用として教材費や宿泊費、災害傷害保険料などが必要ですが、センターごとに金額が異なります。おおむね教材費として約5,000〜15,000円、宿泊費に1泊約2,000円、災害保険料として約1,500円程度かかる場合が多いです。
認知症介護指導者を目指すのが向いている人
認知症介護指導者は、認知症介護に携わるスタッフの指導を行い、介護の現場を広く支援したい方に向いています。現在の課題を洗い出し、良質なケアを提供するために何が必要であるか、自ら主導となって改善に向けた行動ができる方におすすめです。また、認知症介護指導者は、認知症患者だけでなくその家族や地域住民に向けた活動も行います。
広い視野を持って認知症への理解や対応力の向上を目指し、地域社会全体をサポートしたい方にも向いている仕事です。
認知症介護指導者は良質なケアの提供に欠かせない重要な存在
認知症介護指導者は、介護の現場にとどまらずあらゆる場面で活躍する存在です。研修を受けることで、指導者としての対応力や認知症ケアの専門知識や技術が身につき、自ら先頭に立って認知症ケアの支援が行えます。
認知症の人や地域全体をサポートしたい方は、ぜひ認知症介護指導者研修の受講を検討してみてください。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。