認知症の方を落ち着かせる方法とは?正しい対応やしてはいけないことを解説
著者: ゲートウェイ
更新日:2023/12/22
公開日:2023/04/14
「認知症の方に落ち着いてもらうにはどうすればいいの?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。認知症の方は、不安な気持ちから落ち着かなくなることがあるため、声かけや接し方を意識する必要があります。ここでは、認知症を落ち着かせる方法について解説します。認知症の人にしてはいけない対応や適切な対応法についても紹介するので、ぜひ参考にしてみください。
目次
認知症の方を落ち着かせる方法
認知症を落ち着かせる方法 |
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・相手の気持ちを受け入れる・共感する ・優しく声をかける ・スキンシップで伝える ・相手のペースに合わせる…など |
認知症の方は、ご自身が一番戸惑っており、不安などから冷静さを欠いてしまうことがあります。そのため、まずは上記のような方法で落ち着かせることが大切です。対応方法を間違えてしまうと症状の悪化にもつながるため、ポイントを押さえて実践してみましょう。
相手の気持ちを受け入れる・共感する
否定することなく、相手の気持ちに寄り添い共感することが大切です。認知症の方が落ち着かないのは、何かしらの不安を抱えているケースがほとんどです。そのため、まずはその事実や気持ちを受け入れて、共感するよう努めましょう。「不安な気持ちをもっと理解したい」「少しでも力になりたい」という想いを持って接する気持ちは、認知症の方に伝わるものです。焦らずじっくりと関わってみてください。
優しく声をかける
認知症の方へは、優しく「大丈夫ですか?」「そうだったの、辛かったですね」などと声をかけることが大切です。大きな声を出したり、乱暴に声を荒げたりすることはNGです。ご自身が認知症の方の立場だったらどのような言葉をかけられたいか、イメージしてみるとよいでしょう。いきなり大きな声で話しかけられると驚き、不安を感じるのではないでしょうか。
「またですか」「そうではないです」など否定的な言葉にも、不快になってしまうはずです。相手の気持ちに共感することを忘れずに、優しい言葉で声をかけてみてください。
スキンシップで伝える
認知症の方は、時に会話が成り立たなくことがあるため、その場合は優しく手を握るなどスキンシップを図ることをおすすめします。会話が成立しなかったとしても、目線を合わせて優しくスキンシップを図ることで、落ち着くことがあります。まずは、優しく声をかけることが大切ですが、声かけで落ち着かない場合には試してみてください。笑顔を忘れずに接することもポイントです。
相手のペースに合わせる
相手のペースに合わせて一緒に行動してあげることで落ち着くことがあります。日頃からリラックスした気持ちで過ごせるように環境を整えたり、本人のペースに合わせることが大切です。相手が落ち着かない時に急かすのはよくありません。たとえ間違ったことをしていたとしても、否定したり急かしたりせずに「一緒にやりましょうか」などの声かけを意識しましょう。
認知症の人にしてはいけないこと
認知症の方への対応方法を間違ってしまうと、落ち着かせられなかったり、落ち着きを失わせてしまったりする可能性があります。正しく落ち着かせるためにも、してはいけない対応について理解しておくことが大切です。
認知症対応の3つの「ない」
認知症の方と接するときは、3つの「ない」を押さえておくことがポイントです。
1.驚かせない
2.急がせない
3.自尊心を傷つけない
上記3つの「ない」は、認知症でない方がされても嫌なことではないでしょうか。認知機能が低下すると、普通の方以上に影響が出るため、3つの「ない」を意識した接し方が求められます。特に、自尊心を傷つけてしまうことは、信頼関係の低下にもつながります。心を閉ざしてしまうことで、認知症状をますます悪化させてしまうケースがあるため要注意です。落ち着きを失わせないためにも、3つの「ない」を理解して接するよう努めましょう。
認知症の人にしてはいけない対応
3つの「ない」に加えて、認知症の方には以下のような対応もNGとされています。
・叱る
・強制する
・命令する
・子ども扱いする
・行動を制限する
・役割を取り上げる…など
認知症の方が常識外れな行動をしてしまったり、落ち着きを失ってしまったりするのは、認知機能が低下しているためです。対応する側が忙しいなどで心の余裕がないと、つい叱ったり行動を制限したりすることがあるもしれませんが、逆効果のためおすすめできません。
認知症の方は、何があったのか詳細な事実は忘れていても「怒られた」「何もさせてもらえない」といったマイナスな感情は残り続けます。理由もなく嫌がらせを受けていると思われる可能性があるため、上記のような対応は行わないよう注意しましょう。
認知症の人への正しい対応方法
認知症の方が落ち着いた日常生活を過ごすためには、私たちが上記のような正しい対応で接するよう心がけることが大切です。ここでは、認知症の方への適切な対応法について詳しく解説します。
見守る
認知症の人は「できなくなってしまうこと」が増えてきますが、一方で「できること」も多くあります。時間がかかったり、やってみたけど難しかったりするケースもありますが、まずは見守ることが大切です。「どうせできないだろう」と思ったり、面倒だからと見守らずにやみくもに行動を制限したり、役割を取り上げたりするのはよくありません。まずは見守ってみてください。
どうしてもできなかった場合には「一緒にしましょうか」など、自尊心を傷つけないような声かけを行って、代わりに対応してあげると良いでしょう。
余裕を持って対応する
認知症の方に接する介護者側は、自然体で余裕を持った対応を行うことが大切です。対応する側が焦りや不安、苛立ちを抱えてしまうと、認知症の方にも伝わってしまい、落ち着きがなくなってしまうケースがあります。私たち自身、相手の声のトーンや表情から、相手がイライラしているのではないか、と判断することもあるでしょう。不安にさせないためにも、笑顔を忘れずに優しい声かけで余裕を持って接するよう心がけてみてください。
後ろから声をかけない
唐突に後ろから声をかけると相手を驚かせてしまい、落ち着きを失わせてしまう可能性があります。なぜなら、認知症の方は、普通の方よりも視野が狭くなる傾向にあるためです。後ろから声をかけても気づかれないケースが多くあります。そのため、一定の距離を保ちつつ、相手の視界に入ったところで声をかけるよう心がけましょう。
相手の目線に合わせる
相手の目線に合わせて対応することで、認知症の方の気持ちを落ち着かせることができます。背が低い方や座っている方に話しかける場合は、身体を低くして、目線を同じ高さに合わせましょう。腰が曲がって円背気味な方は、目の高さを同じ位置にしようとすると、目線が合わなくなります。そのため、下から覗き込む形で対応しましょう。認知症の方の姿勢や体型に合わせた対応が必要です。
穏やかな口調ではっきりと話す
認知症に限らず、高齢の方は耳が聞こえにくい場合があるため、穏やかな口調でハキハキと話すことが大切です。兼ね合いが難しいですが、はっきり話そうと大声を出しすぎることで、落ち着きを失わせてしまう可能性があります。穏やかさを忘れず、早口や甲高い声、大声にならないよう気を配りましょう。
認知症の人を落ち着かせるには?症状別の対応方法
認知症の症状 |
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・物盗られ妄想 ・同じ話を繰り返す ・幻覚・幻聴 ・暴言・暴力 |
認知症の症状は上記のようにさまざまです。症状に合わせて正しく対応することで、落ち着かせることができます。ここでは、認知症の代表的な症状をいくつかピックアップしました。それぞれの、正しい対応方法をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
物盗られ妄想
物盗られ妄想とは、記憶障害が原因で起こる症状で、財布や鍵など本人にとって大事なものがどこにあるのかわからなくなった状態を指します。
物盗られ妄想を落ち着かせるには、まず「大変ですね」と状況に共感し、「一緒に探しましょう」と優しく声をかけてあげることが大切です。盗られた何かを見つけてあげるよりも、認知症の方が見つけられるように誘導するよう心がけましょう。犯人にされた側からすると「よくしているつもりなのになぜ」と落ち込む方がいるかもしれませんが、叱ったり否定したりする対応は逆効果です。
そもそも物盗られ妄想は、認知機能低下に伴う不安や苦痛によって引き起こされています。そのため、認知症の方も症状に苦しんでいる点を理解して関わることが大切です。
同じ話を繰り返す
同じ話を繰り返すのは、話をした事実そのものを忘れてしまっているからです。そのため叱ったり、発言を否定したりするのはよくありません。一度聞いた話であったとしても、話にうなずいたり、適切なタイミングで相槌を打ったりして、聞く姿勢を見せることが大切です。
また認知症の方は、独り言が増える傾向にありますが、静かにさせようと注意することで悪化してしまうケースがあるため注意しましょう。独り言を話しているときは、話しかけたり指摘したりするなどの対応は取らず、優しくそっと見守ることが大切です。自尊心を傷つけず、見守る姿勢で関わることで、落ち着かせられるでしょう。
幻覚・幻聴
幻覚や幻聴で不安やパニックを引き起こしてしまうことがあるため、まずは危険でないことを伝えて安心させることが大切です。「大丈夫ですよ」と優しく声をかけたり、手を握ったりするなどして、安心感を与えるよう心がけましょう。
また、声掛け以外にも、環境を整えるなど、幻覚・幻聴に対する知識をある程度持っておくことも大切です。暗い場所で起こりやすいため、部屋を明るくしたり、片付けて広くしたりするのがおすすめです。幻覚・幻聴を伴う認知症は「レビー小体型認知症」でみられるケースが多く、症状にムラがあります。動物や人が見えたり見えなかったりするため、周囲は戸惑いだけでなく「本当に見えているのかな」と疑いを持ってしまうこともあるでしょう。しかし、症状に起伏があることを理解しておくと、戸惑うことなくじっくりと寄り添えるようになります。
症状によって一番恐怖を感じている認知症の方を、リラックスさせられるような声かけや接し方が大切です。
暴言・暴力
認知症の方が暴言・暴力を起こすケースでは、その行動をとる理由が何かしらあるため、まずは少し距離を置いて気分を落ち着かせることが大切です。そして、少しでも気分が落ち着いてきたら、原因を聞いて解決に努めていきます。原因には、自分の思いを伝えられない苛立ちや、症状の進行から自制心が効かなくなるケースなどさまざまです。
ただし、原因が何かを探ろうとするあまり、聞きすぎるのはよくありません。うまく伝えられない、もしくはできないことへの不安やもどかしさから、さらに暴言や暴力につながる可能性があるためです。その場合も、叱りつけたり、力ずくで押さえたりするのはよくありません。
認知症の方が抱える怒りや不安な気持ちは、少しずつ、時間とともに落ち着いてくるため、冷静さを取り戻してから確認するよう心がけましょう。
認知症を正しく理解して落ち着かせる方法を実践してみよう
認知症の方は、不安な気持ちから落ち着きがなくなることがあるため、優しい声かけと共感する姿勢を意識して関わることが大切です。自尊心を傷つけたり、叱ったりする行動や言葉掛けは、信頼関係が失われるだけでなく、症状の悪化にもつながるため注意しましょう。
物盗られ妄想や幻覚など、さまざまな症状が現れるのが認知症です。対応に難しさを感じることがあるかもしれませんが、認知症の方も症状に苦しみ、辛い思いを抱えている点を理解して接することが大切です。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。