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サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の問題点や課題について

著者: ゲートウェイ

更新日:2023/12/22

公開日:2022/01/28

施設に入居せず、在宅でこれまで通り暮らすことを希望する高齢者が増えていることから、住まいそのものを提供するサービスである「サ高住」の需要が高まっています。しかし、ニーズの多様化や施設の増加ゆえに、問題点も露見されるのが現状です。サ高住の問題は、働くスタッフにも関わるもの。そのためサ高住へ就職・転職を検討している方は、サ高住の問題についても押さえておきましょう。

サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)とは

サービス付き高齢者向け住宅、通称「サ高住」はバリアフリー構造かつ安否確認や生活相談等のサービスが付帯する住宅です。まずはサ高住の特徴や入居者の特徴などの基本情報をご紹介します。

サ高住の特徴

サ高住は設置主体を問わない、高齢者向けの住宅です。以下基準を満たしている住居であれば、サ高住として登録できます。

ハード ・床面積、原則25平方メートル以上
・構造、設備が一定の基準を満たしている
・バリアフリー構造である(廊下幅、段差解消、手すり設置)
サービス 必須サービス:安否確認・生活相談サービス
※その他サービス例:食事提供、清掃・洗濯等の家事援助など
契約内容 ・長期入院を理由に事業者から一方的に解約できないこととしているなど、居住の安定が図られた契約であること
・敷金、家賃、サービス対価以外の金銭を徴収しないこと 等

 

診療所や訪問看護ステーション、デイサービスなどの施設が併設しているサ高住も。高齢者の方や在宅を望む方が増えていることから、年々サ高住の登録数も増加傾向にあります。

サ高住の入居者

サ高住の入居条件は60歳以上、または要支援・要介護認定を受けている60歳未満の方です。自立状態にある方を対象とした「一般型」、日常的に介護を必要とした方を対象とした「介護型」の2種類の施設があります。一般型でも介護が必要となった場合は、外部の介護サービスを利用することで入居が継続可能です。介護型は特定施設入居者生活介護に指定された施設もあることから、中重度の要介護状態でも入居できます。サ高住によって提供サービスや受け入れ体制が異なるため、入居者の特徴は施設によって異なる点が特徴です。

サ高住が抱える課題

サ高住は開設規制が比較的緩いこともあり、事業者や入居者が課題を抱えやすい状況にあります。ここでは国土交通省発表の資料「サービス付き高齢者向け住宅の現状と課題」から、事業者と入居者の感じている問題点をみていきます。

事業者

資料内における実態調査では、以下のような課題があげられています。

・見守りの回数が増えたため、職員の負担が重くなった
・看取りが行える体制が整っていない
・事業者が自ら提供する生活支援サービスの回数が増えたため、職員の負担が重くなった
・生活相談の回数が増えたため、職員の負担が重くなった
・特殊浴槽など、要介護者のための設備が十分に整っていないため、入居者の生活ニーズに応えることが難しくなった
・周辺地域も含めて、医療・介護サービスを提供する体制が十分に整っていなかった

 

介護業界の人手不足による業務負担の課題は、サ高住も例外ではありません。また看取りや要介護者のニーズの多様化に対応しきれていない点も課題となっています。サ高住は介護福祉施設という扱いではない点で、専門施設と比べると職員体制が薄いことから、入居者の状態によっては十分な安全確保が厳しい状況にあります。

入居者

国土交通省調査によると、サ高住に住み替える高齢者の多くは「特に不満はない」という回答。一方で、以下のような契約や費用に関する不満も散見されます。

・サービス内容について契約時の説明が不十分だった、または聞いていない
・費用について契約時の説明が不十分だった、または聞いていない
・入居中に請求される費用で納得のいかない部分がある
・実際のサービス内容が、契約書の記載や契約時に聞いた話と違う
・実際の費用が、契約書の記載や契約時に聞いた話と違う

 

契約時の説明の不十分さ、実際の費用や提供されるサービスとのギャップに関する不満が聞かれます。開設規制が緩く条件を満たせばサ高住と名乗れることから、費用や不適正な内容のサービス、職員の理解度の不十分さが入居者の不満につながっていると考えられます。

サ高住の問題点

サ高住は需要が高まる一方で、問題点も指摘されているのが現状。悪質、かつトラブルの多い運営会社に就職・転職しないようにも、介護従事者もサ高住の問題点について押さえておくことが大切です。

悪徳な運営会社による囲い込み

悪徳な運営会社による囲い込みが起こっているサ高住もあります。本来、必須で付帯する安否確認と生活相談以外にサービスが必要な場合は、入居者が外部の介護サービス事業者を自由に選べます。しかし、悪徳な運営会社では入居条件にケアマネの変更や特定の介護サービス事業者を利用することを含め、囲い込みによる不当な介護報酬を得ている場合があるのです。入居者によっては必要以上のサービスを強要されてしまい、結果的に入居費用の負担が大きくなってしまいます。さらに過剰な介護報酬の発生は税金の無駄使いにも直結し、結果的に財政の悪化にもつながる問題です。
現在では囲い込みの解決策として、併設事業者がサービスを提供する場合は介護報酬を1割減額する、事業所を限定しないことをサ高住の登録基準に含めるなど対策を講じています。

職員体制に見合わない入居者の受け入れ

サ高住は見守り付きのバリアフリー住宅という特性が強く、福祉施設として利用するには職員体制などの面で不十分な点もあります。介護型であれば中重度の要介護認定を受けている方でも入居可能ですが、特定施設入居者生活介護に指定されているサ高住は少なく、介護施設と同等に利用することは難しいといえます。しかしそれでもサ高住で自由な暮らしをしたい入居者と、空室を埋めたい運営会社の希望により、一般的なサ高住でも要介護度の高い方や認知症の方を受け入れてしまっているのが実情です。厚生労働省による「サ高住の供給状況等に係るデータ」では、入居者の要介護度と認知症の程度について以下のようなデータがあります。

入居者の要介護度 ・自立〜要介護2:64.7%
・要介護3~5:30.7%
入居者の認知症の程度 ・認知症なし:30.7%
・Ⅱ~Mレベル:40.0%

 

認知症レベルⅡ~Mは、以下の通りです。

Ⅱ:日常生活に支障をきたす様な症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる
Ⅲ:日常生活に支障をきたす様な症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする
Ⅳ:日常生活に支障をきたす様な症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする
M:著しい精神症状や周辺症状あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする

介護型でない限り夜間の常駐は必須ではなく、有資格の相談員の配置は1人以上です。上記の割合で中重度の要介護者や認知症高齢者がいると、基本的な職員体制では入居者の安全確保は厳しいでしょう。実際に職員の目が行き届かないことも相まって、サ高住内での事故や孤独死なども発生しており、危険な運営体制が問題視されています。

過度な増設による廃業や登録抹消

在宅高齢者のニーズが増加したことで、自由な暮らしが実現できるサ高住は戸数も右肩上がりです。しかしその裏では不適切な運営やニーズに合わないサ高住の設置、トラブル等により廃業や登録抹消が起こっています。厚生労働省資料によると、令和元年度の登録抹消は76件、うち廃業は53件と、廃業件数は令和元年度が過去最多となりました。経営不振による廃業は53件中17件であり、それ以外の理由で廃業になっている件数が多いことから、問題を抱えるサ高住が多いことがわかります。就職・転職した先のサ高住が廃業や登録抹消を受けると、突如として職を失う可能性もあるため、適切な運営会社・体制のサ高住を選ぶことが重要です。

ニーズが高く施設数も増えているサ高住は、問題や課題を抱える施設も多い

在宅を希望する高齢者の増加を背景に施設数を増やすサ高住ですが、その背景には多くの問題や課題を抱えています。問題の発見により、国土交通省や自治体は問題解決向けさまざまな策を講じているものの、依然として問題視されるサ高住も少なくありません。サ高住の問題点は入居者だけでなく、サ高住へ就職・転職する介護従事者にも関係することです。そのため今記事を参考に、サ高住の問題点を把握しておくことが大切です。

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